今朝は福祉センターに行く日でそのつもりで用意していたのだったが、朝、福助が突然
「やっぱり今日は幼稚園に行きたい」
と言い出した。偶然、就学する小学校見学の日でもあり、直前、どうしてもそっちにいきたくなっちゃったらしい。
予定を自ら変更したい臨機応変さは評価できるが、小学校は別に珍しい場所でもないし、先月は骨折でお休みしているのでセンターにしようよと説得する。
「ごみなら僕が出すから。サッカーでも点いれるから」
こうなると、もうまるでりんご欲しさに芸をする、戦時中のかわいそうな象である。おかんがそういうのにめっぽう弱いことを知っての狼藉か。……よし、じゃあ幼稚園だ。
問題は時間。
登園するなら九時十五分までに。という通達があったのだが、センターに電話して予定変更して、園に伝言してもらうはずのママ友に電話して訂正して、車に乗っけた荷物撤収して、しかしすでに……。どんなにがんばったって遅刻だがここはせめて園長先生に誠意をお見せせねば。と、自転車にまたがる。
ああもう東京の道はどうしてこうでこぼこなんだろう。肋骨にひびくってんだよと文句をいいつつ、サイズだけは競輪選手のような太ももを生かして走る走る。ワープしたかのようにほとんど遅刻しないで到着したのは奇跡だな。
痛み止め余分に飲んでおけば大丈夫だろう。
捻挫より骨折より、最後まで痛いのは打撲なのねと知って、自宅ではなるべく安静に、パソコンをいじり倒す。蜜月、蜜月。
ようやく家の片付けも少しずつ前進させられそうだ。なにしろごみ屋敷だからなあ。年内はお客様、呼べないわ。
子ども部屋を見ると、福助が自分で作ったゲームが。
升目がきってあり、そこにカードを置いていくものらしいのだが、切り取ってあるカードには漢字で「豆」と書かれている。全部、豆。豆、五十枚。謎の豆ゲーム。そんなにも、豆が好きか。なぜだ。見ただけではルールもさっぱりわからないが、天才の考えることは凡人にはわからなくてもいいのだ。豆カードを捨てないように、そっとまとめておく。
ちょっと前、福助は幼稚園でクラスメイトの女の子にキスされた。と、その女の子から聞いた。
ふいうちのキス。
「だって、福ちゃんが大好きなんだもん」
と言われて、私が彼女を抱きしめてキスしたいと思ったよ。こんなかわいいお嬢さんに初めてのキスを受けるなんて、何たる幸運。当の本人はテレまくるばっかりだが、そんなテレ顔を見たことがなかったので、こっちまでニタニタしてしまった。
所詮、豆ゲームづくりにうつつを抜かす六歳児ですが、末永くよろしくお願いします。な、気分さ。
そういえば、P子が福助宛のラブレターをもって帰ってきたこともあった。同級生の妹から頼まれたらしい。
福助、わが世の春だな。早すぎる春。これがあと十年後に来れば……。
サッカーをしているところだけ見ると、福助は確かにものすごーく頭がい子どもに見える。
考えて動き、指示してリーダーシップも発揮し、足も速く、誰よりもルールを理解し、何より得点をあげる率が高い。チームメイトに応じてポジションも戦略も変え、努力家だし、またサッカーを愛しているのが全身で見て取れる。
利き足ではない左でのシュートを丁寧に練習していたので、そのわけを聞けば、左サイドから上がったときのチャンスをものにしたいから、という。わが子ながら、そんな六歳児に敬服する。(恒例・親ばか)
だが、グラウンド以外で見ると、正直、かなりトホホな人でもある。
ニコニコ笑いながら「くそばばあ」と言って私に叱られ、その理由がわからない、ノッポくん(仮名)はおかあさんをそう呼んでいるっていうから…と涙ぐんでいたりする。意味わからないでカンでしゃべっているから天然の加減が半端ではない。
もちろん、道路のとまれの白線では必ず一時停止しないと渡れないとか、防火ベルを誰かがふざけて押そうとするだけで洒落がわからずに大騒ぎしたりとか、みんながおやつを食べ始めても納得の行くところまでは練習をし続けるとか……んー、奇行は当然たくさんある。
だがサッカーが彼を助けるのだ。くるくる回りたくなったときには、ボールを一個。これでただのアブナイ動きがとんでもないドリブルを繰り出す動きに変わるわけで、ボールが彼をささやかなスーパーマンにしてくれる。
女の子から、カッコイイと熱い視線を送られるなんて、誰もが経験できるものじゃない。福助は、ちょっと脳内に不細工なところがある。だから豆カードゲームなんかを作り出している。でもそのせいでサッカーへの執着が高い技術につながっているのなら、そのおかげであんなかわいい女の子にキスされちゃったのなら、人生ちゃんとトントンってことなんじゃないかなあと思う。
なんとなくだが、スポーツ選手にはそういう競技に一途な反面、私生活破天荒みたいな人が多いような気がするんだが。
まるで他意はないのだが、大リーグに行く井川選手に、異常にシンパシーを覚える昨今である。がんばれ、井川。心から応援しています。
さて、私自身、今日は自転車にも乗れたし、もう回復だな。気分がいいので、ビールで痛み止めの薬を飲んでみた。
……そして今、全身全霊、後悔している。寝ます。
きいいいいいーっつ!
6歳で初キッスに愛の告白を受けるだとぅ!
だ、だ、だから、許せんと言っておったのだぁぁぁぁ!
(冷静に。冷静に。)
ふふふふふ。
Posted by: ゆう子 : 2006年12月27日 09:18HOME |
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