2006年11月19日

こういう家族

「なおちゃんはね」
なおちゃんとは、母・ヨシコにとっての義理の娘、私の弟の嫁である。
「なおちゃんは、こっち来たとき、魚が死んでるってびっくりしたんだって」
と、いきなり来るのである。
なんだろう、大量殺戮?! そんな事件、あったかしら。
「あの子、生きた魚しか、食べたことなかったんだって」
なおちゃんはアザラシではない、あくまでも義理の娘である。
「ほら、海辺の育ちだからね、あの子は。お店に死んだ魚しか置いてないって、そりゃあもう胸を痛めたらしくてね」
想像の中で、なおちゃんが生き餌を狙って泳ぐ海獣になり、私の胸が痛むのである。

母・ヨシコの痛烈なところは、その直後にまた話題が変わることで、想像が出来ないから弱ってしまう。
そういうわけで、大半の会話は自分の中で完結してしまうため、当然のことながら、話の前後から何かを推測することはできない。
「ヨシコさん、大変申し訳ないんだけど」
「申し訳ないのはわかってるから、いちいちいわなくていいから」
「明日、粗大ゴミの収集日なんだ。で、世田谷は粗大ゴミ処理券が必要なので、これから言う金額をスーパーに買いに行って欲しいんだけど」
「え、何? 何買うの?」
「だから、粗大ゴミ処理券」
「手裏剣? 手裏剣なんか、何に使うの、あんた、そんなもん、どこに売ってんの!?」
忍者か! ……笑かされているのは、親不孝な娘に対する何かの復讐なんだろうか。

福助は「おかーさん、痛い? 深呼吸だよ。はい、しってー、はいてー、しってー」
そこで止めるなって。それに、吸ってー、だから。
「いやーだー、もう。おかあさんったら」
ミスに照れて、頭突きをひとつ。たまたまかがんで物事さとしていたものだから、左肋骨直撃。い゛ーでぇぇぇぇぇぇっっっっ。
ジダンか!

そして相方は隙あらば、ばりばり笑かしにくる。
福助天然語録は枚挙にいとまがなく、P子だけは同情のまなざしで私を見つめるばかり。
母・ヨシコは足を骨折したときの苦労話を都合20回ぐらい繰り返し、そのたびに「いやー、ゆうちゃん、足じゃなくて本当に良かったわよ」といったが、足だったらどんなに笑っても響かなかっただろうと思うと、素直に頷けない、親不孝な娘なのであった。

それでも、猫の手も借りたかったので、大変助かりました。ありがとう、母・ヨシコ。
ついでに、緊急事態に、下田の実家からも援助物資の米と魚が届きました。ありがとう、義母・マサヨ。
送られてきた魚、相方は海辺の育ちでも、しっかり死んでて、おいしい干物でした。

2006年11月19日 15:03
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