2006年10月13日

to be or not to be.

んー、私だったら週に一度、クラスのお友達が欠席するっていうの、子どもから聞けば、やっぱり何だろうって思うよ。
本人に直接聞けなければ、どうしたの?って噂にもなると思うんだ。
それで間接的に病名聞いたらびっくりしちゃうし、言われなきゃ気づかないのに、人は「そういう目」で敢えて違うところを探そうとしちゃうと思うんだよね。
それが福助君にとっていいとは思えないの。

と、ママ友かおりん(仮名)から言われた。
なるほどなあ。そういう視点は想像してはいたが、実際にその立場の人から聞くと説得力が違う。そういう視線に触れて、福助がどう反応するか、そういうこともきちんと考える必要があると思う。
かおりんは、元看護師で、病気に対して理解が深い。もちろん、情けも深い。福助のこともよくよく承知の上での、客観的な発言だ。
福助とかおりんのところの息子とは、親友同士と言うほど仲が良いわけではないが、徒競走のライバルで今回のリレーを通じて、何か固い友情をお互いに感じているようだ。もちろん、気が向けば放課後にも遊ぶ、まずまず仲良しな友達である。母同士も、じっくり話し合う機会はないまでも、飲み会なんかでは一緒に盛り上がるし、お互いに好印象という程度には近距離のママ友だと自負している。
就学相談、通級のことはクラス中が知っているので、当然話題にものぼる。
かおりん以外にも、別のママ友から同じような事を言われたことがある。
「通級するなら、噂になる前に、ゆう子さんのことだもん、きちんと病気を説明しなければ気が済まないでしょう。でも、それって得策なの?」
……どうなんだろう。

「事情、知らないのに、勝手なこといったかも。ごめん」
と、後でかおりんからメールが送られてきたが、私は、こういう本音をこそ聞きたかったのでうれしかった。謝る必要などどこにもないのだ。かおりんの息子とは、同じ小学校に行く。当然、かおりんに「あの子、なんで休んでるの?」「ええーっ、自閉症って、何ソレ?」と聞かれる公算は高く、もはやそれは、私と福助だけの問題ではないのだった。
真剣に考えて、一緒に支えてくれたママ友たちにとっても、それは厄介な問題になってくる。
もちろんかおりんはそんな邪心で私にそう言ったわけではないが。

広汎性発達障害なあんて、身内にでもいなければ、そうそう理解出来るものではない。
犬好きでなければ、シェットランドシープドックだとかアフガンハウンドなどと犬種を言われたところで、ピンと来ないのと同じ原理だ。「犬?」ということはわかっても、姿形はもちろん、その犬種固有の特徴まではわからない方が普通だと思う。広汎性発達障害ときいて「なんか、脳の病気?」程度が、一般的な知識だと思う。
鈴木さんち、子犬飼っているんだってという噂なら微笑ましいが、あそこの小一は子犬のようなんだって!、という噂では困ってしまう。でも、脳の病気らしい。というのは、多分によい部分よりは、悪い部分に尾ひれがつきやすかろう。
噂の最も困るのは、訂正のしようがないところだ。
子犬のようだという噂を、「子犬のように可愛い」と好意的に受け取れるのは愛犬家ぐらいなもので、まあたいていは、「子犬のようにはしゃぎっぱなしで自己コントロールがきかないんじゃないかしら、うちの子に悪い影響が、学級崩壊の火種が、ああ怖い。隔離してくれればいいのに」なんてことを思われてしまうような気もする。
杞憂ならいいけれど、多分、それが現実だよなあ。
そういう無知や偏見と闘うためには、福助をきっかけにして「知ってもらう」しかない。だから私はカミングアウトしてきた。
幼稚園はよかったんだ。毎日顔を合わせ、子ども達を預かりあいっこして、みんなが私の子だったし、福助もみんなの子だった。
でも、公立の小学校では、難しい。保護者会ですら、半数もこないのだ。PTAの活動は1割の人たちが動かしている。そんな状態で、どうやって、知ってもらえばいい?

障害は理解されるべきだと、だから勉強しろ、もっと知ってください! 差別、反対!! と熱弁をふるうか。
いや、それ、そんなに愉快なトピックスでもないと、私は思っているんでね。
身近にいればその天才性やら変わり者加減は結構面白いけど、関係ないところで万人が心惹かれる類のネタではないだろう。
たまたま、クラスメイトとか身近に障害児のお友達がいて、時々大変そうだけど楽しそうに生きてるんだなあってことがわかってもらえたら自然と差別はなくなる。大変な部分は手伝おうかと言ってもらえたら、それが何よりの支援になる。
障害に対する知識なんていうのは、実のところ、それで充分すぎるほどだと思うんだ。
「自分の子は障害児でなくて良かった」という本音があったとしても、それを差別感だなんて言い立てるのはきっと間違っている。そう思うのが普通だもの。ただ、そこから進化して「でも障害児だったとしても、障害とか、なんかこう、あんまり関係ないかも」と思ってもらえたら最高。そんな理想を持った育て方や生き方は、模索できるんじゃないかと思うんだ。
You may say I'm a dreamer?

私の場合は身近すぎて福助愛に溺れて(シャーッ)もう障害だか天然だか個性だかさっぱりどうでもよくなっているが、これはきっと身近であればあるほど起こりやすい錯覚なんだと思う。
例えばうちのクラスの子は誰であれ可愛いけれど他のクラスの子どもはそれほどでもない程度に、単純接触は愛を育てるのに大切な要素だ。
「福助君の病気、いいじゃん! っていうか、サッカーに集中するって、それ、病気?」ぐらいにママ友から笑い飛ばしてもらえる昨今、「みんな慣れてくれたんだなあ」となんだか幸せな気分になることが多いんだが……小学校では、そこが難しい。

私は特に犬好きではないけれども、愛犬家と話を合わせられる程度には犬種を知っている。
それでも図鑑でネガティブな記述を読み、「この犬種は飼いたくないなあ」と思うものがある。偏見、ともいうが、身近じゃない、興味がない、って、そういうことだからなあ。
図鑑見たってわからないよ、犬、見て触って、「いやん可愛い!!  うわー、欲しい」って思う、その経験がなければね。
逆に言えば、子犬見たら、可愛いと思う。衛生的にはどうのこうの、いやあの顔はむしろ不細工でちっとも可愛いとは思えないなんて言ってたって、例えばパグなんかもうひと抱きしてでろでろ舐められでもすれば、はにゃーんってなっちゃう。
福助は、ぺろぺろ舐めたりはしないけれど、シュートを決めるかっこよさも天然のおもしろさも、身近にいればわかることがあって、その上で犬種、もとい、病名をみんなにご披露する分には問題も少ないが、そのかっこよくかわいい部分(親ばか?)が全く見えないまま、病名だけが一人歩きすることを、やはり私は憂うのだ。

もちろん隠し立てするつもりはないので、私は療育がどんなにうまくいっても、アイデンティティとしての自閉症を追究するだろうし、自閉症もオタクも大好きだし、きっとここにも書き続けていくと思う。しかし、彼のプライバシーや彼自身の意志、権利が発生するころには、もう書けなくなるんだろうなあ。
良くも悪くも「子どもは母親のもの」であるうちだけ、期間限定の福助話なのだと、改めて思う。

告知か、黙るか。通級、行くべきか行かざるべきか。
それが問題だ。
初めて福助が出逢う「バラエティーに富んだ人たちが住む社会」に対して、私自身の立ち位置が決まらないわ。
毎晩遅くまでそんなことばっかり考えているから、家事もお琴も進まないのだ。
でもこうやってのたうちまわっている記録が、いつか笑って読めるようになるはずだと信じて、とことん苦悶するのだ。
基本、様子見という前提がさらに強固になっているのに、それでも先生と会って話がしたいのは、単なる好奇心ではなく、本当に福助の未来を見越してのことか。
知識を積み重ねることで私の中の偏見は消えたが、これをさらに活かす方法はないか。
福助にとって最もいい道、とは。そこに私の自意識はどこまで関与し、どこまで消していけるのか。
自問自答が続く。

2006年10月13日 01:37
コメント

そうだねえ、意地悪な人もいるし虐める相手を捜してる人も一年生ともなればもういるからなあ(ライター友達のKさん、お嬢さん1年、もう学級崩壊中と日記に書いてあった)。
ウチの息子のクラスも通級だか放課後の育リョウだかに通ってる子がいる。もう1人、学校では全く喋らない子がいる(ニコニコはしてるのだけどね)。
この2人の事,息子はどう思ってるのかとある日訊いたら「ん? なにもちがわないよ?」と言った。
この感覚が大事だよ,と深く思ったね。そして進学率が高いと噂の別な公立や、まして私立では、先生たちの方の「じゃまだなあ」って気持ちが子どもに伝わっちゃうだろうなあって思った。
みんな息子みたいに思えれば良い社会になっていくのだがなあ。
答えにもアドバイスにもなってないな。しかしU子ちゃん、がんばって。

Posted by: けんた : 2006年10月18日 22:04

ありがとう。
子どもは普通に受け止めていくのよなあ。
うちのクラスにはもう一人ゆっくりちゃんがいるのだが、
その子のゆっくりをイライラする子どもなんか一人もいないのよ。助けてあげることに喜びを感じていたりする。
うちの小僧は与太郎でいいから愛して欲しい、と思っていたら、与太郎からサッカーバカに進化してしまったんだれけれど、もちろん残っている与太郎的部分も愛されている。子どもの愛の深さと大きな器量に、驚くことがあるよ。大人になると、どうしてそういうことを忘れてしまうんだろう。私自身もわすれていたんだろう。
小僧のおかげで取り戻したけれど、取り戻せてない人もたくさんいるよなあ。
なんて、考える今日この頃です。

Posted by: ゆう子 : 2006年10月21日 07:05
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