2011年11月04日

うなぎ

うなぎが食べたい。
うなぎが食べたい。
と、スーパーマーケットでのお買い物につきあってくれる小僧がいう。
しかし、私はごんぎつねではないので、うなぎをタダで届けたりはしない。
「よし、ご馳走は自分で稼げ。ハットトリックでうなぎ特上肝吸い付きだ」
とその場をごまかして、その日はサンマにしたのだった。
ミッドフィルダーでの出場なら、3アシスト以上、ディフェンダーでの出場なら2試合連続無失点。
今やベンチも多いから、これは限りなく不可能に近いご馳走である。

と、思ったら、小僧、何をどうしたのか、3ゴールをきっちり決めた。
とりわけ、相手ディフェンダーを抜き去るドリブルうなぎランは実に見事だった。
食べ物がかかると、鈴木家の子どもたちは実に強い。
普段いかに粗食かということを露呈しているが、欲しいものは自分の手で勝ち取るのがフリーランスの常識である。領収書を鈴木名義でもらうことも忘れてはならない。経費では落ちないけれど、申告の時に必要になるからな。

そもそも、娘がテストで100点をとったらおいしい物を食べさせてくれるご褒美システムを提案し、それにのっかったのが事の始まりだった。
小僧は優勝するたびにサッカーグッズを買ってもらっている。逆に言うと優勝しなければスパイクがボロボロでも履き続けてきたわけだが、とりあえず足で稼ぐというのを幼稚園から実践してきた。
娘がサッカーチームに入っていたときに「足で稼ぐ」を実践すると靴下一つ買えないことになるので、「ゴールを決めたら世界一周」を約束していた。・・・書割程度の守備力では、このオッズが妥当だったのだ。
中学に入って、娘はサッカーをやめ、弓道をはじめた。弓道にロトはない。彼女は部活でなんだか崇高な精神修養をしているので、賭けは無縁だったのだが、それでは弟との公平性に欠く、私は学生なので勉強をするのは当然だが、ご褒美ご馳走システムならどうだろう、食べてみたいものがこの世の中にはたくさんあるので、俄然ヤル気が出てくるんだよね、どうかなあおかあさん? と言い出したのが始まりだった。
以来、彼女は試験のたびに、コツコツと美味しいものを食べている。

それを見た小僧が、100点で美味しいものはいいなあ。と言い出す。
オレは100点でオロナミンcがいいなあ、とか言っている。
小学生の100点と中学生の100点は意味が違うんです、と、却下していたという布石があっての、うなぎである。

というわけで、近日うなぎを食べに行く。
もちろん、特上は小僧だけで、私はお茶漬けか何かにする。
または、スーパーで丸々したウマそうなのを買って肝吸いをつけ、私はアナゴか何かを食べるのだ。


2011年11月04日 11:52