2009年07月15日

恋と期末とお寿司

中一のころの私は、ただひょろっと背ばかり高くて、ショートカットで、遊びに行くときには野球帽とグローブにバット。毎日素振りをしていましたから、手はマメがつぶれてタコになり、肩幅は今も昔もがっちり、そりゃあどこから見ても立派な男子でした。
私の友達が職員室に呼ばれ、お前は男女交際をしているのか!と執拗に責められたのですが、その相手は私だったという、笑えない笑い話があるほどです。

そんなモノが、恋などしても叶うはずもなく。

しかし、初恋の先輩と私はなんと三年後、偶然再会するのです。そのときの私はさらさらのロングの髪、伸ばした爪は鹿皮で磨き上げ、アイブローもリップクリームも欠かしませんでした。ちょっと緩めに着こなしたブレザーの制服。楽園のような県立高校は楽しくて、さぞ生き生きとしてもいたでしょう。
見ようによっては焼酎の銘柄みたいな名前の、名門高校に通う彼からのお誘いを受けたときには、ただもう、夢のようでした。
でも、彼氏という存在は恋愛初心者にとってはなかなか御しにくいもので……。どこかでいっぱい背伸びして、かなり無理をしてて、頭でっかちで、一生懸命で、つまりは荷が重くなっていった気がします。

その彼が、前の彼女とよりを戻しやがって、私が振られた日には運悪く大雨にも降られて、むこう何ヶ月かのいろいろで、何がなんだかもう心身ともにぐしょぐしょで帰宅したとき、母ヨシコは、私のためだけに特上寿司二人前をとってくれたのでした。
わかってる!と思ったね。
腹が減っては、次の恋は出来ないのです。

だから、娘が派手に失恋したときには、勝手に特上寿司!と決めていました。

でもそれよりも先に、うちの中一は「回らないおすし屋さんで、お好みのお寿司」の権利を自力でゲットしてしまいました。ちぇっ。
何かご褒美がもらえるとしたら、回転しないお寿司というものを、注文して食べてみたいというのが夢だったそうです。地味なのか派手なのか、よくわからない夢。
そこで、期末の試験結果で、100点があればという、ちょいと無理難題を押し付けてみました。
「甲乙つけがたし」を、平然と「凹凸つけがたし」と間違えるような出来の悪さですから、安心していたんですが……恐るべし、彼女の食欲!!

学校の授業が面白くて愛おしくてというきっかけから、勉強することが楽しくて仕方ないのは大変結構なことですが、最近では休日も甚平姿のまま、顔も洗わず、ずーっと机に向かうような生活をこよなく愛するタイプになりつつあります。これが続くと、違う意味で、寿司が特上になってしまうではないかと、母は懸念しています。
中間テストで好成績を収めて以来、時間があると我が家の小さな書庫というか資料室に、こもるようになりました。
女の子って、この時期、オシャレに目覚めたりするもんじゃないの?と不安にかられつつも、話していて少しずつ面白くなってきているので、やめろともいえず。
私が彼女の年のとき、確かに恋はしていたけれど、脳内はひたすら部活と星新一に夢中だった気がします。中一ってのは、そんなもんか。
あの頃のガリガリだった少年のような私の体は、そのうち出るべきところがぱーんと出て、中年になった今や、出るべきではないところまで出て、ふわふわのぶよぶよになっています。
娘がガリガリから、ばーんと凹凸つけがたくなくなる頃には、きっともう少し構うようにもなるでしょう。
そのままぷよぷよに移行しないことを祈りつつ、一緒にお寿司を食べに行こうと思います。

2009年07月15日 21:35