2009年02月06日

魔窟

育てたように子は育つ。
彼女のよくないところは、私の鏡だ。
と、言い聞かせて二時間。
くしゃみはもとより、チックまで出てきて止まらなくなったので、一度、彼女の部屋を出た。

魔窟だ。

制帽をなくしたというので強制介入。部屋に探しに入ったのだが、まるでインディアナジョーンズの秘境であった。
30リットルのゴミ袋ふたつがいっぱいになったので、次は70リットルをもって臨むが、これには覚悟が必要である。命がけだ。

のどが痛い、風邪をひいたといっていた娘の原因はホコリだ。
この魔境に五分いたら、誰でもトローチが必要になるわっ!
私はハウスダストアレルギーなので、まず鼻がやられる。全身に蕁麻疹が発生。ただでさえ、気が抜けて弱っているのだ、身内に攻撃されるとは思わなかった。今計ったら微熱まであるではないか、高温期でもないのに。
娘はいったいどれだけ丈夫なんだ!

とっくに着られない140センチ150センチの服が押し込んで積んであるのはなぜだろう。
私の宝物の本を乞われて貸したが、数々こんなに陵辱されているのはなぜだろう。
お友達にあげないと私の立場が!と力説されて買った、おみやげ物屋さんのマスコットたちが大量に出てくるのはなぜだろう。
二段ベッドの二階につながる階段が物に占拠されているのはなぜだろう。受験用の筆箱まで落ちている。
借りてきた本が何冊も何冊も何冊も出てくるのはなぜだろう。
提出していない宿題のプリント、私に渡されるべき学校からのお知らせ、このとっちらかりかたで、勉強など出来るはずがないではないか。小論文の構成を考える前に、机の上の構成を考えよ。公立に挑む準備段階で、まず部屋の整理整頓から教えるべきだった、私は!

私も整理整頓は得意ではない。得意ではないが、ごみ屋敷に暮らすことは出来ない程度にデリケートだったのが幸いしている。3817gで生んで12年、娘ちゃんは健康そのものだが、健康は別の形で活かしたい。

30分の休憩をとったら、もう一度介入。私の貴重な午前中は、魔窟での宝探しに費やされていく。
まだ制帽がみつからない。
掃除の仕方を書いたメモと、何をどうするべきかのTO DOリストを作る。
テプラで作った区分けシールを貼りまくる。
仕方ない、こうしたのは私。私も苦手。遺伝子遺伝子。と、思いながら、やがて本気で泣けてくる。
この六年間、鉛筆は何ダース買っただろう。
制帽だって彼女は二個も持っているはずなのだ。
ごみになっているこれらの雑貨や、重複しまくっている文具、タグがついたまま袖も通さずに終わった服や見向きもしないアクセサリーやバッグを買わずに済ませたら、いくら貯金が出来たのか。
いかん、弱っているときに掃除をするとろくなことがない。自分のことなら、こんなときに大掃除などしないもの。攻撃的になるのを待って、戦いを挑み、捨てた片したホコリもないことで、制圧した感があるのに!
中学生で留学するんだと目標を立てたはいいが、これではホームステイ先から強制送還されてくるのは必至だ。
こんなときに一体どこから引っ張り出したのか、私の胎教日記などを読んでいやがったらしく、家具の下からそんなものが出てくるのが腹立たしい。それは君が妊娠したときに読むためにあるのだ。そういう「秘伝思い出箱」をあける暇があるなら、制帽子を探せ、ばかもん!
春休み前に、「小学生箱」と名づけたダンボールに思い出の品を詰める。それが終わったら、全部捨てよう。全部捨ててやる。捨てるぞ、おー!
あ、ちょっと攻撃的になってきた。さて、勇気を持って再度、魔窟へ。果たして、制帽は見つかるのか!?私の体調はいかに!?

炭鉱のカナリヤちゃんが病院から帰ってくる前に、やっておかなくちゃならないことが山ほどあるというのに、まったくもー、この健康バカ娘め!

2009年02月06日 11:17