2008年07月20日

黄金の

これまでのあらすじ。
サッカー馬鹿、福助八歳。右足の親指に痛みを訴え、一週間の休暇を余儀なくされた。
ひょっとすると腫瘍かも‥‥と脅かされていたが、もう全然痛くないと言い張って、練習にも復帰し、さらには意気揚々、病院に。
果たして、小僧の足の親指の痛みは、巻き爪だろうということで、落ち着いた。ものすごく気に入っていた美人先生に、<巻き爪にならないためのぐりぐり>を爪の間にぐりぐり入れられて、もう二度と彼女に会いたくないと、失意のずんどこに。

さらに小僧に襲いくる不幸は、整形外科医から言われた、君の幅広い足に合うミズノかアシックスにしなさいねというアドバイスだった。小僧はそれをどうしても飲み込めずにいたのだ。
サンタクロースからもらった、ロナウジーニョモデル。
激戦を優勝して勝ち取った、クリスチャーノロナウドモデル。
全部ナイキだ。福助のナイキ好きは徹底していて、将来ナイキと契約するのだと決めているのだった。それなのに、今、僕がナイキを履かないわけには‥‥という、悲しい顔。
「じゃあ、こう考えるのはどうかな、今は最高のパフォーマンスをするためにナイキではない靴を履く。そして、いい選手になれば、ナイキがぜひ契約してください、福助モデルを作らせてくださいと足型を取る粘土をもってやってくるから、そこにちゃぽんと足をつけて、だ‥‥」
具体的に説明していくと、なんだか夢見る表情から、すっかり照れ照れモードになっていく。石膏の足型はKAMOというサッカーショップで見ていた。それが臨場感をもって、自分に迫りくるわけで、
「よし、じゃあ新しい靴を買いに行こう!」
そして、一時間かけて、選ぶ。
専門の人が懇切丁寧に説明してくれたことには、いくつかはいてみてもらってわかったが、どうも福助君は足にぴったりしたものが好きらしい。しかしそれは成長期の足にはよくない。だが、あまりにダボダボに慣れてしまうと、今度は大きくなったときに靴選びに苦労することになる。最高のパフォーマンスのために、という言葉を専門の人が使うたびに、真剣に迷宮に入り込んでいく福助。
それでも迷いに迷って、買ったミズノ21センチの靴。一足だとすぐにぼろぼろになるから、いつも二足同時に買うのだが、先日、20センチのトレシュを友達にあげたばかりで、21センチのトレシュはすでに三足、これが四足目という贅沢ぶりなので、一足でとどめおく。ああ、でも二週間でぼろぼろになりそうな気もするんだけど。
いつの日かナイキと契約して、元をとっ‥‥ありえねぇ!!

サッカーは貧しい子にも楽しめるスポーツなんじゃなかったの、FIFAさん?

とうちゃん、がんばれ! 君の黄金の右腕に、福助の黄金の右足がかかっている。おかんは、黄金のたれで焼肉でも作ろう。

2008年07月20日 11:01