小僧が新しくスクールで週二回コースを切望したため、とうとう週五回サッカーをやることになった。
♪月曜日にボールを蹴って、火曜日にボールを蹴って、トゥリャトゥリャトゥリャトゥリェトゥリャトリャリャ〜。
で、残りの二日は何をしているかというと、公園で友達とサッカーをしているので、もう、なんかその辺はどうでもいいやという気になった。
スイミングスクールに通ってせめて25メートル泳げるようにしたい、とか、ちょっと見所のある卓球やテニスなども月に一度ぐらいは一緒にやってみたい、とか、記憶力が人並みはずれているのだから将棋を覚えてみるのはどうか、とか、おかんとしてはね、いろいろと夢想しましたよ。
でも、もう、お前はサッカーだけをやればよろしい。
一週間に十日もやっている。そんな新婚さんみたいな回数、サッカーやっちゃって体は大丈夫なんだろうか。
という話は、さておく。
そのスクールに体験入部した今日、小僧は、以前クーバーの夏期講習で会った子や、ヴェルディーのサマーキャンプで会った子と再会したという。
あのすっげぇうまい、格が違う感じの子たちがそれ?
「オレ、なつかしくてさー、あの時会ったよねといっても『誰?』って言われちゃったんだよー」
って、普通そんなの覚えてないから、7歳は。
名前は覚えていたの?といったら、それは思い出せないのだという。でもシュートの角度とか、ドリブルのクセとかは覚えてるよ、着ていた服も。あの頃よりずっと、うまくなってるんだよーと言う。
その記憶力で化学式に取り組み……いや、言うまいて。
20人ぐらいまでなら一瞬見ただけでその数をあてられる。
暗算だけはばかっ早。
これが゛天から授かった才能゛と名前を変えてくれればいいと思うのだが、んー、やっぱ、病気の範疇なんだろうかねぇ。
自閉症ーー。
脳の使い方が少しばかり違う人たち。
世の中の便利な発明品、今では常識になっている原理の発見、卓抜した芸術……そんな功績を残してきた異星人のような彼ら。
飛びぬけた「記憶力」や、ゲームへの「集中力」や、ボールへの「執着心」や、抜群の「空間認識能力」と「暗算力」、この「自閉ちゃんの特徴」が武器になって、サッカーに活かせるといいね。
しかし、たいていの小学男子は、程度の差はあれ、みんなこんなもんじゃないかとも思う。
ポケモンカードを記憶しろといわれたら大人なら泣くけど、彼ら、難なくやってるしさ。
病名はどうしたってちらつくわ。たいていは忘れてるけど、時々変わってるなあと思うたびに、
「小学男子なんてこんなもの」
という言い方が出来る局面ですら、
「自閉症だからなあ」
という風に思う自分がいて、なんだかなあと思う。
たとえば、どの国に所属していようと、「その人」が好きだと思う。どんな性別だろうと、何をしていようと、「その人」を見たい。カテゴリーわけというか、レッテルは、傾向を知るための取っ掛かりとしては便利だけど、そこにいつまでも縛られてしまうなら本当にばかげている。……と、頭じゃわかっているんだけどなあ。教養とか経験の浅さだ。これ、私自身の課題だな。
サッカーをやっていれば幸せなら、小学生らしく、サッカーだけをやっていればいいよ。
中学卒業するぐらいまでは、このまま、幸せに過ごせるといいね。
「このスクールはすごいよおかあさん、みんな一年なのにパスがまわせるんだ。オレがオレがで運ぶよりずっと精度が上がるシュートを知ってるんだ。ゴールへの意識が違うよ!個人技もうまい。ゴール前のパスは危険なんだけど、ちょっと面白い挑戦もたくさんできるし、すぐにマークがべたづきになっちゃって、なかなか自由には動けなかったけど(以下うるさいから省略)」
と、帰りの車では興奮のあまり、止まらない饒舌だった。サッカーに関しては理路整然としゃべれるのに、どうして国語は……。いや、だからいうまいて。
……幸せなら、よし。
そんな風にサッカーに夢中になっているあなたが大好きで、そういう姿を見ていることが私の幸せだ。
幸せなら、よし。
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