小僧の着ているバルサのレプリカユニフォームには、ユニセフと大書してある。
しかし、彼には模様のようなもので、気にも留めていないのだった。
学校の生徒会が一丸となってユニセフ募金を始めた。
そこでそれがどういうものなのか、説明を受けたらしい。
突然お金がほしい、と言うのでどうしたのか聞いてみると、
「注射を打ちたい」
という。なんだなんだ、ヤク中になったか?
「つまり、わくちんなんだよ」
と、意味不明のことを口走り始めてから、ユニセフにたどり着くまで長い道のりだったが、何かが彼を突き動かしていることだけはよくわかった。そのときに、バルサのユニセフの文字が、誇らしくも意義深く感じたらしいことも、伝わった。
お小遣いのシステムのない小僧が寄付をするといっても、親がお金を持たせたのでは意味がない。
小僧に出来る1番得意なこと……そうだ、サッカーだ。彼のシュートは私の喜び。ゴールに関して、報奨金を出そう。
今までも、ハットトリックでアンダーシャツ一枚、優勝してニューモデルのトレーニングシューズ、だのなんだの、かなり適当なお見積もりではあるが、自らの力でサッカーグッズを購入するシステムだった。それを、ユニセフ基金にするのはどうだろう。
子どもが行う成果に対して報奨金を支払うのは間違っていると思うが、それが寄付金ならぎりぎりOKな気がした。
「そうか、それがいいよ。オレ、世界の子どもたちのために、シュートするよ!頑張るよ!」
1ゴール100円、ハットトリックボーナス200円。小僧の右足が冴えまくった。
生徒会活動の募金が終わっても、小僧の募金活動は終わらない。
週末は、ウニの空き瓶(ウニセフ?)に小銭がたまっていく。
世界の子どもたちのためにシュートをするんだという気持ちが、ゴールに対する貪欲さにつながっているのだから、それは小僧、立派な大人への第一歩だよ。
ちなみに、何度か書いているが、娘のサッカー用品はあてがいぶちである。彼女が1ゴールしたら、家族で海外旅行ということになっている。オッズが違うのである。
P子はお小遣いもあるし自由に使える貯金もあるので、そこからということにしたが、ユニセフ募金強化週間だけ、彼女は普段のお手伝いに報奨金を付けてほしいというので、喜んで条件を飲んだ。
買い物10円、肩たたき5円、洗濯物干し10円、洗濯物たたみ15円。小銭をコツコツ溜めて、それを寄贈した模様。
弟の金額に比べると、とても小さな額だ。
しかし、金額は小さくても、世界の子どものために自分ができる家事を一生懸命手伝ったあなたのお金は尊く、その価値は大きい。金額の多寡は問題ではないのだと教えるいい機会になった。
子どもたちのためにできることを、子どもたちが一生懸命考えている。
大人として、子どもたちのためにできることを、もっと真剣に考えないといけない。
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