めっきり落ち込む。
放課後、学校で遊ぶ約束をした小僧のお友達Yは、学校には来なかった。少年団に行く時間になって学校にお迎えに行くと、小僧は上級生と夢中でサッカーをしていた。
福助小僧はタフである。ボール一個で誰とでも遊べる。
福助と私が校門から出るとき、Yに会った。
学校に様子を見に来たようだった。
小僧が嬉しそうに駆け寄り、話し掛けると、黙り込んで下を向いてしまった。
Yが来なかったのは、小僧が別の子に誘われるのを見ていたからだ。実際、優柔不断な福助は、数人の子が集まるA君の家に行きたいと言って、ダブルブッキングを私に叱られている。
もし福助がA君のところに遊びに行けば、放課後の校庭で一人になってしまう。普通、一年生が他の学年に混じって遊ぶのは難しい。だから、来なかった。
でも、福助はYとの約束を守っていた。
いつもは明るいYは、福助を責めたいのか、自分を責めているのか、泣きそうな顔でうつむくばかりだった。
男子のやることだ、まあそんな感情の行き違いなど山のようにある。Yの心を傷つけるダブルブッキングを叱られて、福助も少し大人になったかもしれない。
とかなんとか。
普通なら、これ、普通にいい話。
今や普通の人のスケールに当てはめて私は福助を育てていて、相手の気持ちになって、だとか、そんなことを言われたらどんな気持ちか、とか、実に丁寧に教え諭しているつもりだったが、このあと、私は感情を爆発させてしまい、昨日の私はひどく落ち込んだ。
人の気持ちを考えないのは男子にありがちなことで、究極の男子脳といわれる自閉症は、特に著しく男子の困ったちゃん部分のエキスが濃い。
負けるの嫌い、という想いから、少年団公式戦参加の発表に、福助、
「俺、やだ。行かない。試合でない、疲れるから」
と、真っ先に堂々と監督と選手の皆さんの前で発言して、思い切り空気を冷やした。もちろん、その場で母に叱られる。
負けるのが怖いのはわかるが、しかしよりによって疲れるからとは何だばか者。しかも、監督の意向とか、空気を読め! と、帰り道でずっと説教。
だって負けるもん、勝てないもん。と、うじうじしているので、そんなこと言うやつは士気を下げるから連れて行かないことにする、周りの選手に頑張ってもらえ。と母が宣言すると、今度は自分が行かないと勝てないから、行ってあげてもいいみたいな発言をして、「このへたれ天狗がっ!」と、母に道端で思い切り殴られる。
優柔不断で、自信過剰で、そのくせ本当は弱虫で、だが「やっぱり出たい」とか単純な主張は力強く、意味なく繰り返す力技で何とかなると思っている。
最低だ。と思ったら、もう私が止められなかった。
「そんなこと言うやつが選手になれると思うなよ、お前なんか今日からマッサージもなしだし、食事管理もしないからそう思え。練習には付き合わないし、応援にも行かないし、試合にもエントリーしない。勉強もしなくていい。ゲームだろうがテレビだろうが、好きなことを好きなだけして、いいかげんな人間として生きて行け!」と激昂してしまい、福助を号泣させた。
病気というより、個性とか才能とか、そういう色合いが濃くなってきたと思っていたんだけどな。なんか、私、何期待してんだろうな。
普通に育てるなら、こういう親子喧嘩もありだと思う。選手育成、みたいな所に立っている親は、結構皆熱い。
だが、その後に私を襲う激しい自己嫌悪。
早口でまくし立てて叱ったって、福助にはわかんないよ。
彼の聞き取り言語能力の低さは、私が一番よく知っている。
空気読むとか、人の気持ちを考えるとか、病気なんだからできない前提に立って、どうするのか一つずつ噛み砕いてインプットしなくちゃ。
雰囲気で察知するとか病気の特質としてダメなんだから、こういう場でこういう発言はしないと、冷静に記憶させていかなくちゃ。
何より子どもなんだから、病気だろうと健常だろうと、失敗するよ。均衡とるために弱気の発言もするだろう、そういう丸ごとを受け止めなくてどうするの。とりわけ、福助は失敗や叱られたことをいつまでも律儀に記憶している、そういう病気なんだぜ。
でもさ、いつもいつも冷静でなんかいられないよ!!
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