大会の朝、夜更けに止んだ雨は空気を少しばかり冬の気配にしたけれど、予報は曇り。そして、この曇り空は徐々に薄日がさすような、期待の持てる雲の厚さだ。私はワクワクしながら目覚めて、窓を開け、すぐに嬉々としてお弁当(と、相方のご飯)をつくり始めた。
気合いが入っている日は卵焼きもものすごーく上手に焼けたりして、昨夜から用意していた飲み物の凍らせ具合もバッチグー。万一のための氷のパックもある。タオルも大中小、渇いているの濡れてるの。着替え、医薬品、所定の持ち物、すべて完璧にして、子ども達を起こす。
あと数分で友達の車が迎えに来てくれるなあというそのとき、電話が鳴った。
「おっはよーっっっ。鈴木でぇす」
日曜の早朝、それは同行する友達以外あり得ない。と、思っていたら、それは別人の真っ暗な声だった。
「本日、雨のため大会は中止になりました」
「え? なんで? だって雨止んでるよ?」
とにかく決定事項だし、すでに出発している人もいるから無駄口を叩いている暇はない、すぐに連絡網をまわせと叱られた。
私の後は、同じ幼稚園のママ友かおりんだ。電話をかけると、
「はーい、Wでぇーっす」
と、異様にハイテンションな声の応対。まあ、休日のこんな早朝にかけてくるのはたいてい試合がらみの何かだと思うようで、その声を聞いた途端、私も真っ暗な声になった。ああそうか、人に告知するときに現実は初めて現実になるのか。
「おはよう。鈴木だけど、大会中止だって。雨で」
「なんで?」
「だから、雨で」
「え? だって、止んでるよ?」
……まるっきり同じリアクションにちょっと笑って、事情を話して電話を切った。
今日、一日、何をしたらいいの? と思う八時前。化粧済み。応援Tシャツを脱ぎながら、電車だったらもう出発していたはずだから、自宅で電話を受けられただけ、ダメージが少なくてよかったんだと思うことにした。
その後、事情を話してテレビゲームを解禁にしても、おさまりがつかないのが福助である。
気合いは乗りまくっている。
夕べのうちに干してしまった洗濯物をベランダに移したら、薄日が差し始めた。お手伝いしながらいよいよもっておさまりがつかない福助。
そこに朋友・サンタ(仮名)からお誘いがあって、昨日見学に行ったFCに、再び参加することに。サッカーで走らせるしか、福助を納得させる方法はない。また鬼監督にご挨拶し、仲間にいれて頂いた。
鬼監督、昨日聞いた話(聞きようによっては自慢話?)をひととおりされたが、あとは実に愛情深く指導して下さる。今日はパパさんコーチもいらしていて、みなさん熱心だ。この熱心さは愛である。と思ったら、こう、打たれちゃったりもするんだ、私。
今日は子どもだけで作戦を練り、子どもだけで試合をする。
試合中はコーチも審判するだけで、とやかくいわない。
小三のチームに入れて頂き、福助、孤高の与作システムだったが、ゴール前に毎回つめてつめて、はってはって、クリアミスのチャンスをモノにしての1ゴール。ちゃんと福助は自分のスタイルを貫き通すんだなあ。サンタはその前に一点、つぶされても必死で守りきり、立派なアシスト前のパス。U-6軍団、勝利にちゃんと貢献しているのである。
ハーフタイムの後、後半からは小三のキャプテン、福助とサンタをバックスに指名。ははは、ある意味、わかりやすい。
そのあとも福助、闘莉王のようにかけあがり、得意の速攻ボレーシュートを2本放った。すでに我が軍の小三2トップが三点を上げており、キーパーはパパさんコーチだったためがっちり止められたが、U-6軍団には味方、誰もパスを送り込んでこないし、ゴール前に走り込むとバックに戻れよと先輩に怒鳴られていた割に、ポジジョンの意味もいまひとつわからないまま、二人ともよく闘っていたと思う。
小学生の練習に出られて満足そうなU-6の二人ではあったが、半袖を着ていても暑いような中で練習を見ながら、私はなんで今日が中止なんだよと大会開催者に毒づいていた。
彼らの冴えた動きは、今日のために準備して気合いを乗せていたからだ。ああん、大会だったら!! 残念だなあ、優勝候補だったのに。自称だけど。
グラウンドコンディションがわるいから? 主催者はきっと、サッカーは野球と違ってオールウェザーのスポーツだということをご存知なかったのでは? 福助は発散したからいいが、私もP子もおさまりがつかないよなあ。と、思っていた。
そして帰宅後、久しぶりに「塊魂」を30分やったら、初めて3D酔いして吐きそうになった。思えば、昨日、数時間しか寝ていなかったのである。喉も痛いし、声枯れは治らないまま一週間以上過ぎている。ああ、福助を学校のFCに預けて、応援してないで昼寝すべきだったのである。
リビングで横になっていたら、P子が頭痛と吐き気を訴え……なんのことはない、多分風邪だ。私たち。試合で吹き飛ばすはずが、悪化したんだ。
いや、都心の大会、その後都内で遊ぼう計画は頓挫して正解だったのかも知れない。
明日からまた、ものすごーく過密な一週間が始まる。
……なのに、なんでこんな時間まで起きているのだ、私は。
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