ネットはロングテールか

Twitterで鈴木みそを検索すると、色々な意見が聞こえる。
エゴサーチとは、自分の名前をググることだが、あまりネットの評判のよくない作家は、編集者に「やめたほうがいいですよ」と自分の名前の2ちゃんのスレッドを見ないように言われる。らしい。
「鈴木みそ」
は昔からあまり評判の芳しくない漫画家であります。よろしくないのを知っているということは、よく検索しているということですね(笑)
ここ10日ほど、Kindle関係で話題になっているので、「鈴木みそ」や「限界集落温泉」に関するつぶやきが多いが、おおむね評判がいい。
好意的な書き込みだらけで、悪評をカットするフィルタができたのかと思うくらい。
牧歌的だった初期のインターネットを思い出す。

好評なのはまだ数千、という数だからであって、これが2万3万という単位で売れると、いつもの「みそバカしね」という書き込みが出てくるのかもしれない(笑)
信じられないことに、今Kindleコミック部門の1位から4位までを独占していまして、まあ一生のうちに二度とないことなので、今を十分満喫してますが。これほど(といっても普通の売れたマンガ本より3桁ほどオーダーが小さいのだが)「ギリギリ」が売れているのはどんな理由なのか考えてしまう。

●電子でマンガを読もうとは思っていなかったが、100円で買ってみたら意外と読めた。という人が多い説。
まだアマゾン書店は立ち上がったばかりなので、なんでもよかった。たまたまタイミングがよかった。

●マンガの内容とこのブログの書き込みが、リンクしているのが面白い説。
潰れかけた旅館と、ぱっとしないベテラン漫画家。というのが通じていると言えば言える。なにかネットで一発しかけてやろう的な話がリアルで進行している。というのが誘引になっているのではないか。

●本屋で注文するほど興味はない。けれども見かけたら読んでみよう。というファンが、案外多くいた説。
単行本を心待ちにしているファン、とまではいかないけど名前は知ってるし、面白いなら読みたいな。という人たちに、今まで届いていなかった。
なんせ本屋に置いてないから! 
大きな書店の店員に聞かないとわからないような、隅の方の下の段に最新の4巻だけぽつりとある。という状態ではなく、いつでも探せてすぐ買える。
小さなニーズを掘り起こせたのではないか。

本は「売れ残るリスク」がとても大きいので、誰もが売れる。と判断できるそつのない作品が、計算できるものとして大きく刷られている。
一部のファンに受けるマニアックな作品は、街の小さな書店では仕入れてもらえず、小部数になってしまう。
全国のどこの本屋でもあるようなメジャー作家より、癖っぽくて一部のファンしかいない、でも変わった面白い作品を作るよ? みたいな作家が電子書籍で脚光を浴びるかもしれない。
これまでの「メジャー」「マイナー」というカテゴリー自体がすでに古臭い気もする。

ネットはロングテールだ。と昔言われていたけれども、長い一本ではなく、たくさんの多様な尻尾を持っているのかもしれない。
ネットは九尾の狐だったりして。(たしかに化かされている人は多い)
もしそうなら、一部のファンだけに知られていた作品が、アマゾンで再発見されるかもしれない。3千人のファンがいたら、紙の本は作れないけれど、電子本なら小銭くらいにはなる。
作家には、実は隠れたファンが、今まで考えられていた数の10倍も100倍もいて、既存の書店ルートでは見えなかった需要が掘り起こせたりするのではないか。
2ちゃんによって個人のつぶやきが作家に届いて、作家の胃酸を増やすように、個人のニーズがまとまって届くことで、マイナーと言われていた作家の資産を増やしてくれるかもしれない。(韻を踏んでみた)
マスが小さくなることで、雑誌が潰れていく。という書き込みを今朝見たが、小さく分散することで、たくさんの作家や作品が生まれてくるとしたら、悪いことばかりじゃない。
鈴木みそが小さく売れているのは、実はその電子書籍時代の前触れなのだった。

だったらいいなあ(笑)
俺にとって今年が電子書籍元年です。
 「アマゾンでマンガを出版」カテゴリが長くなって、最初のエントリーが読めなくなってしまったので分割して新たなカテゴリ「アマゾンでマンガ(怒涛編)」になりました。合わせてよろしくお願いします。