2010年09月29日

大学のスクーリング

卒論を書くか書かないかで迷っている学友と一緒に、先生の研究室を尋ねた。
その先生が指導教諭なら、私も書きたいかもしれないと思うほど大ファンの先生なので喜んで付き添いを志願したのだが、その先生は学友・苫小牧さん(もちろん仮名)の名前は連呼しても、私の名前は全く覚えてくれていないようなのであった。
アメリカ帰りの先生には、「鈴木」姓は単純すぎるのかなあ。
うーん。小テストは常に100点なのに。
その影には、すでに逃げ足の早い駿馬と化した脳内の海馬をだまくらかして、みっちり記憶させていくという、けなげな努力が欠かせない。
もちろん、スクーリング修了試験だって前日から用意し、両面びっしり、ロスタイム最後の一秒まで使って書き込んでいる。その先生の科目の時だけは。
途中で挟まれる知識のクイズ大会でも、大変に素晴らしい戦績を誇っているし、お目にかかるたびに「鈴木です」と名乗った上で、ご挨拶しているのだが……。
なぜか、全く名前を覚えてもらえないのね。一度も呼んでいただいたことがない。苫小牧さんは連呼されて、全くもって羨ましいぜ。
アメリカ帰りのドロンパ様に、切ない片思いのU子ちゃんである。

ところで、別の先生から、
「あなた、大学院は考えてないの?」
大学院に行くなら卒論は必須だから、この研究をさらに深めてみてはどうかと言っていただいたことがある。ときめく。
心理学の実験系の授業は、実験法を考えるのも課題を考えるのも、実験するのも統計を出すのも、楽しすぎてどうしましょ!と思う。
考察も……マーケティング分析して天下の某大手広告代理店に売っていたぐらいなわけで、オリジナルな分析はお手の物だ。よくあんなものをお買い上げくださったなと思うが、案外センスよかったのかもしれない。
ずーっとこんなことやあんなことを研究して暮らせたらいいなあと思う。そりゃ、思う。
でも、あと4年か5年かけて、卒業するのがやっとなんだろうなとも思う。
国家試験受験資格だって危ないのに、とても卒論にかける時間がない。
ましてや、娘に自力で大学に行けという親が、大学院分の学費を自分に費やせるはずがない。

どんな過去も、私の輝かしくこっ恥ずかしいかけがえのない過去だけれど、もしも戻れるならニューヨークに短期遊学しようとしている自分をとっつかまえて、「その金で今すぐ大学に行け!」と言うだろう。
あの頃は、高卒であることが出版業界においてマイノリティーで珍重されたために、大学に行こうなんて考えもしなかったけれど、こんなに面白いなら行っておけばよかったんだよ。誰も面白いなんて教えてくれないんだもの。ケチだなあ、みんな、こっそり楽しんでたんだな。

もしも今、進路で悩む人がいたら、「学校という選択肢」を強く薦めちゃうよ、私は。
フィットしていない学校なら行く意味ないけど、自分に合う面白い学校と、面白い学問はあると思うんだよ。巡りあうまで丹念に探してみるといいよ。できるだけ、若いうちにさ。

暇だなあ、という人がいたら、「もう一度学生」をやってみてと勧めるよ。こんな刺激的な喜びは、ちょっと他にはない。
学生だけじゃなく、習い事でもボランティアでもPTAでもそうだけどさ。
なんでも「えいっ」って飛び込んでみると、知り合いは増えるし、新鮮な知識は蓄積されるし、いいことだらけなんだよね。
それがつまんないどうでもいい会だとなんだか時間の無駄だけど、すこしだけ頑張ろうと思って飛び込んだ会だと、まわりだって粒ぞろい、そこにはいるんだよ〜、タレントが。すごい才能に触れる喜びは、快感以外の何ものでもない。

私自身は、臨床心理士資格を考えて、もちろん最初は大学院入試も想定して大学を選び、試験を受け、今なお頑張って一定の成績もキープしているのだが……大学で学んで、ひとつだけ致命的なことがあったな。
私は「カウンセラー」には向かないんだよ。
だって、嫌いな人、ホント嫌いなんだもん。好きな人は黙っていても尻尾がうなるほど笑顔になっちゃうけど、ごく少数の、ダメな人はダメだ。卑怯な人とか。そんな人の話を傾聴・受容・共感なんかできないよ。器、ちっこいんだもん。
それもまた、私の個性の発見だわ。
今まで興味もなかった社会心理の実験に心惹かれたり、意外なことに制度とか法律にものすごく興味があったことに気づいたり、アカデミックな場所は45歳の私をまだまだたたきなおしてくれる。
明日スクーリングが終わると、しばらくは自宅でレポートに専念か……と、手帳を見て、うわぁぁぁぁ、つーまーんーなーいぃぃぃぃぃ!!

今回の科目は卒論とは無縁の医学概論。
得意分野だから、もうレポートも、科目終了試験も終わって、気楽なんだけど、知ってるつもりで間違っていたことがたくさんあって、ちょっとくじける。私のウェルネスの知識は、15年前で止まっているからね。
さて、明日のスクーリング終了試験用小論文の下書きを始めよう。
ウェルネスについて、以前はお金(原稿料)をもらって書いていたけど、今はお金(授業料)を払って書いている。やってることはおんなじで、そりゃ楽しいに決まってるわ。

2010年09月29日 22:35