クルマエスにのって、たのしかった。
と、日記に書いた福助。痛くて立てない脚だからこそ乗った車椅子、なのに、前向きでいい。
長い待ち時間に、すっかり操縦がうまくなっていた。
ここしばらく、あまり調子がよくないのは知っていた。
激しいシュート練習のあとには脚の甲に痛みが残るらしく、毎日神経質なぐらいシップして寝た。
試合のあとには毎度のことながら、弱点である脛のアイシングも欠かさなかった。
筋肉が硬いので、マッサージもほとんど日課のようにしていた。もっとも、マッサージはベビーの頃から続けているのだが。
ガラスのような脚なのだ、オーバーユースには耐えられないのだ。子どもなんだから、普通に遊んでいて使い減りしていく方が変な気もするが、福助は思い込んだら試練の道を〜な、男なので、細心の注意を払っていた、つもりだった。
それで、今回は股関節にスポーツ障害。股は盲点だったよ。次々よくもまあ。
立ち上がることもできない激痛で病院に駆け込む。……って、早すぎない? そういうのって、こう、セレクションとかトレセンとかそういう選手の悩みなんじゃないの? まだ箸にも棒にもひっかからない小僧ですよ。
しかも、こんな早くにこれでは、ダメじゃんの烙印だよと思う。
さらに、故障の度合いを説明され、それが重篤である可能性も否めず、そこにもってきてドクターに早期教育の弊害を脅かされて、思い切りへこむ。
私がやれって言ったんじゃないもん。やるなっていったって聞かないんだもん。と、本当はありがたいご神託に泣きそうになるが、大人なので我慢する。
帰りに、
「サッカーしすぎだって。サッカー選手になるなら、練習しすぎちゃダメなんだよ。こうやって痛い痛いになったら、サッカーできなくなっちゃうよ」
とといてみる。
「もうちょっとで無回転シュートができるんじゃないかなーと思ってさー」
……聞いちゃいない。馬の耳に念仏、福助に説教。
使えるサイズの松葉杖がないため、しばらくは車椅子だ。早速ユースドを手に入れ、せっかくだからこの車椅子の名前を何にしようか。と、福助に聞く。しばらくは君の足になってくれる相棒なんだぞ。
そうなの? ゼルダの馬みたいなもの?
ゼルダのなんとかゲームで、ゼルダになりきっている相方には、持っている馬があるという。おお、そんなもんだ。その子の名前は?と聞くと「ゆうこ」だって。
……わたしゃ、相方の馬かよ。
「おかあさん、なくてはならない存在なのよ、馬。働き者だし、馬。お父さんにとって、お母さんは、馬っていうよりか、そういう存在ってことだと思うよ、いや馬なんだけど、馬じゃないっていうか」
なんとなくしんなりしてしまった私に、P子、魂の力説。力説されればされるほどむなしくなるので、スルー。まさに馬の耳に念仏。
明日から福助の外出は、クルマエスでGOだ。姓は車、名はエス号ってとこだろうか。
最後の日々、同伴登園できるのだから、馬車馬のように介助しよう。
卒業式までには福助、立ち上がれますように。私も立ち直れますように。
人生って、まだまだ先が長いんだよなあ。
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